風邪は万病のもとといいます。
昔は風邪を引いてから重症になり亡くなられた方もたくさんおられたようです。
そこで傷寒論という本を作り、後のために役立つようにしました。
傷寒論は約1800年前の書物ですが、現在でも漢方を学ぶ人には必読の書といわれ、葛根湯、小柴胡湯など現在でもこの書物よりたくさんの処方が使われています。


その本の序文にはこんな事が書かれています。

私は常日頃より自分の思っていることを述べてみると、扁鵲という医者がその国の元気そうな王様の顔色を見ただけで病気になるのを予告したり、死にそうな人を助かると言って漢方薬を飲ませて生き返らせたりするのを見て、なんと素晴らしいことかと思う。
納得いかないのは、今の世の人達は昔のように医療においてはお金のことなど考えず、一身に伝統医学を学び、病人の気持ちを感じて辛さを理解して治療を行い、お金が無い人だろうが有ろうが、心の治療も含めて救い、人の寿命を全うさせようとはしないで、華やかさを求め、権力にしがみつき、名誉やお金を求め、外見の見栄えをりっぱにすることを大事にして本心を磨くことをしない。
しっかりと地に足をつけなければ何をやっても浮き足立ってやり遂げられませんよ。
ところが、急に病気になって重症になると、驚いて震え上がり、人の命をわからぬ人にその余命をたずね、或いは怪しい占い師にすがり、何とかしてくれと頼む。
人は百年の尊い寿命を備えているのに、藪医者に任せてやりたい放題にさせる。
なんという...悲しい。
命の火が消え、死体になり、地中の深い、暗いところに埋められてどうしようもなく嘆いてしまう。無知とは...痛ましいことだ。
それはまるで暗い中で、或いは目隠しをされてどうして良いかわからず、うろうろしている。虚栄で生きて命を惜しまない。
そして周囲に向かっては人を愛し人の本質を知ろうとしない。
内においては自分を愛し、自分の本質、自分の役目を知ろうとはしない。
災害に遭い、禍に遭い、危ないところをうろうろする。暗く、ぼんやりして浮かれ魂のようだ。
哀しいことだ。
世間の有名な人でもうわべの華やかさを競い、足元を固めず、自分を忘れて形や物にしがみつく。深い谷の薄い冰の上に立っているようだ。
我が一族は以前は200人以上も居た。
それから10年も経っていないのにそのうち140人も死んでしまった。
そして急性熱病から死んだ人はそのうちの七割だ。過ぎ去った昔に死んだ人のことを思い、天寿を全うできず死んだ若い人のことを助けられなかったことに心を痛めた。
だから今まである先輩方が経験を積まれた伝統医療からいろいろと集め、素問、霊枢、難経、神農本経、運気論から選び、その本をもとにして傷寒雑病論という本を作りました。この本ですべての病気が直せるとは思わないが、この本を基本にして病気を診察すれば、病気の本当の原理がわかり、素晴らしい治療が出来ることでしょう。





傷寒論条文

序文、弁脈法、平脈法、傷寒例、太陽病上編、中篇、下編、陽明病篇、少陽病篇、太陰病篇、少陰病篇、 厥陰病篇、弁陰陽易差後労復病篇、不可発汗篇などで構成され、急性熱病の治療法を中心に書いてあります。 しかし単なる風邪ではなくあらゆる急性病についての治療法が書かれてあります。 葛根湯や小柴胡湯など現在も使われる漢方薬の宝庫です。

例)太陽の中風、陽浮にして陰弱、陽浮なる者は熱自ずから発し、陰弱なる者は汗自ずから出ず、 嗇嗇と悪寒し、淅淅と悪風し、翕翕と発熱し、鼻鳴り乾嘔する者は桂枝湯が之を主どる。(太陽病上編)
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