漢方の古典紹介
(4)神農本経(神農本草経)
上品、中品、下品で構成され、生薬単味の効能が書いてあります。 これには気味が書いてあり、これを中心に考えます。 例えば大黄の気味は苦・寒で苦味は血脈を引き締め寒は熱を取ります。 例)人参。味甘微寒。主補五臓。安精神。定魂魄。止驚悸。除邪気。明目開心益智。久服軽身延年。



神農本経

漢方は東洋医学です。それは現代医学とは全く違った背景で形作られました。 一通りの基礎は1800年前に完成されているのです。
常識的に考えるとそんな2000年も昔の医学が現代で通用する訳ないと思うでしょう。
日本はまだ弥生時代でした。しかし中国では三国志でもわかると おりすごい人たちが居たようです。現代ではいろんな便利な物が出てきました。しかし、一方治らない病 気も出てきました。昔の人はどうだったのでしょう。自然と一体でした。最近環境問題が言われています が、人間は自然の一部です。人間は自然の一部だと理解しそれに随って生きていた人たちが1800年 前の人たち。自然を理解し人間をも今よりも理解していたと思います。心と体は一体だと既に思われて いました。

現在でも使われて効果を発揮する葛根湯や小柴胡湯はこの時代に作られました。現代ではいろんな便 利な物が増えたけれど、自然を無視して人間のエゴを追求するのは良くないのです。

ところで、この神農本経には365種類の生薬が出てきます。それは大きく上薬、中薬、下薬の3種類に 分類してあり、上薬120種類は主に養生に使われ、中薬120種類は健康保持に使われ、下薬125種 類は激しい病気の治療に使われます。もちろん全品病気の治療に使われますが、上薬ほど安全で下薬 ほど作用が激しくなっています。上薬には食品にも使われる。ニッケ、朝鮮人参、甘草、霊芝、キクの花 、蜂蜜、ヤマイモ、クコ、ナツメ、海のカキ等があり、中薬にはショウガ、クズの根、百合の根、イカリ草、 カラタチの実、桃の種、アンズの種、アサリ、ハマグリ、イカの骨、スッポン、ウメの実が、下薬には大黄、 半夏、附子や薬用の虫など作用の強い薬物があります。

この神農本経で大切なことはそれぞれに気味と言われることが書いてあり、作用を示します。味に五種 類有り、辛味、苦み、甘味、酸味、塩辛味です。
酸味は肝臓に入ります。ウメ、五味子など。
苦みは心臓に利きます。甘味は脾臓に、辛味は肺に、塩辛味は腎臓に入り、それぞれ違った効果を現 します。神農という角が生えた仙人が百の草をなめて一つの薬を見つけたとかという伝説が残っています。



漢方の歴史

約2000年前の書物に素問という医学書があります。世界最古の医学書といわれていますが、それに は人体の生理、自然現象、養生法、生き方などが書いてあります。それを更に詳しく書いた霊枢、生薬の 解説書の神農本経、素問・霊枢の難解な部分を解説した難経。これらの書物はいろんな人が書いてそれ を誰かが編集しています。そして上記の書物を参考にして薬物(漢方薬)の治療法を書いた傷寒論と金匱 要略があります。此の書物も色々の地域やいろんな人が経験してよく効いたことをかき集めて編集されて います。つまり、漢方とは今までのいろんな先輩方の経験を集めた物です。先輩の治療に於ける失敗や 成功を集め、その良い部分だけを編集されています。うまくいかずに薬のために亡くなられた方も数え切 れないくらいおられるはずです。また救われた方はそれ以上に居たと思います。

漢方は積み重ねです。新しいことはあまりありません。しかしこれらを使うことにより少しずつ、さらなる 経験が積み重なります。それを次の世代が使います。漢方(伝統医学)とはそういうものです。

ただそこには一定のルールがあります。漢方のルールです。
そのルールは陰・陽、虚・実、寒・熱、気・血・水(津液)という言葉を使います。
現代ではこの言葉の正しい意味を理解せずに漢方薬が使われています。それで間違いが起きやすいの
です。そのルールは素問、霊枢という本を基準にします。

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