今回はネズミモチについてお話ししたいと思います。

秋頃になると小豆大の果実を結び、それが黒くなってきます。その形がネズミの糞のようで、葉っぱがモチノキに似ているのでネズミモチという名前が付いたそうです。

この実を中国では女貞子といって薬用にします。
ネズミモチの木は冬になっても青々としていて貞操を守っているので女貞と名がつきました。

中国では実を薬として使うのですが、お酒で蒸してから使います。そして主に滋養強壮、緩下剤としています。
中国の漢方の古典をひもといてみると、「女貞実は味が苦・平。中を補い、五臓を安んじ、精神を養い、百疾を除くことをつかさどる。久しく服すれば肥健にし、身を軽くし、老いず。」とあります。

意釈すると、『女貞子は五味の中の苦味の生薬で、それには血脈(血管)を引き締める作用があり、消化吸収の働きを助け、肝臓、心臓、脾臓(膵臓)、肺、腎臓の五臓の働きを安定させ、腎の精液や心臓の一番大事な働きを育て養い、いろんな病気を治す。続けて飲んでいると、だんだん体がふくよかで健康になり、体の動きが軽くなって年を取っても若くて元気である。』ということです。
つまり内蔵を若返らせることによって若くなるということになります。

秋から冬になるくらいの時に実を採取して水で洗い焼酎漬けにすると良いです。
そろそろシーズンですから皆さん野山に出かけてみてはいかがでしょう。たしか福岡から熊本に行く高速道路の中央分離帯にはたくさん植えてあったと思うのですが、そこは取りには行けませんね.

民間ではネズミモチの葉を胃潰瘍に使っています。なぜ効くのでしょう?
実は薬として使いますが葉っぱにも同じ様な作用があるようです。

漢方的なお話になりますが、腎臓は栄養分をたくさん貯蔵していて体を潤し冷やす働きを持っています。そして体のどこかに故障が起こるとその栄養分を使って修理にかかります。もし今、腎臓の栄養分が不足すると、砂漠が乾燥するように、体に熱が発生して熱くなってきます。腎臓の冷やすことによって体力を調節する機能が弱ってくるからです。

熱というのは自然界では上に上がるか、外に広がって行きます。たき火の炎が下を向いては燃えないでしょう?それと同じように体内に於いても腎から発生した熱が体の上部にじわじわと昇り始めます。

体の真ん中には消化器官、つまり胃があります。腎から発生した熱は胃を熱くします。胃が熱くなると食欲が出ます。お酒を飲んだような状態です。そうすると食べ過ぎる傾向があります。そうすると余計に胃腸に熱が溜まり、胃酸も出ます。胃が必要以上に熱くなると組織が溶けていってしまいます。それがひどくなると胃に穴が空きます。

これが腎臓から来る胃潰瘍の病理です。もちろん胃腸そのものから来る場合もあります。しかし腎臓から来る胃潰瘍は重症になりやすいのです。また糖尿病や高血圧になったりもします。

それでねずみもちが胃潰瘍に良いのです。女貞子(ネズミモチの実)は腎臓を含む体の下の部分を冷やます。胴体の下の部分を冷やすと腸も冷やされます。それでお通じが良くなります。汚い物を排出するのです。
ですから、胃腸がすぐ冷えて下痢しやすい人は注意して飲んだ方が良いでしょう。

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ねずみもち